引用とは,参考とは
レポートや論文を執筆する際,他人の書いた文章やデータを引き合いに出して説明をした方が説得力が増すということがある。他人の書いた文章の一部をそっくりそのまま借用することを「引用」,他人の書いた文章を自分の言葉で要約し取り上げることを「参考(要約)」と呼ぶ。
絶対に守らねばならないのは,どこからどこまでが他人の文献から引用した(参考にした)箇所で,どこからどこまでが自分の意見かをはっきりわかるように書くことである。引用文献,参考文献は,必ずその書誌情報をレポートや論文の終わりに明記する。この方法に従わずに他人の書いた文献を使用することを「剽窃(ひょうせつ)」と呼ぶ。
戸田山和久は『論文の教室:レポートから卒論まで』の中で、「人がそれなりの努力を傾注して調べたり考えたりして到達した真理・知識は、基本的には人類すべてのものとして共有されるべきである。しかし、その代わりにそれを生み出した人にはそれ相当の尊敬が払われなければならない」と述べている。また「剽窃は自分を高めるチャンスを自ら放棄する愚かな行為だ。誇り高く生きたいなら、決して行ってはならない。」とも述べている。著者に敬意を払って正しく使用しよう。
引用箇所の記載例
引用箇所が短い場合
以下のように記載する。2つめの例は場合によっては「著者は」の部分がなくてもよい。引用符は“ ”か「 」(論文中ではいずれかに統一)を使用する。引用箇所の中にさらに「 」がある場合は『 』を使用する。- 著者は「○○○○」と述べている(説明している・分析している等)。 山田は,“大学図書館の開館時間の変化は大学生の図書館利用形態を劇的に変えた”と述べている1)。
- 著者によると「○○○○」(である)。 山田太郎によると「大学図書館の開館時間の変化は『大学生』の図書館利用形態を劇的に変えた。」1)
引用箇所が長い場合
以下のように記載する。引用箇所の上下左右1~2マスを空白にする。
我が国の大学図書館の開館時間が近年急激に変化した理由について,山田は著書の中で以下のように分析している。
18歳人口の減少にともない,近年各大学が教育プログラムや学部のカリキュラムを大きく変化させてきた。カリキュラムの変更は大学運営に様々な見直しを余儀なくさせた。その結果の1つとして,従来の開館時間では十分に学生の学習,研究に応えることが困難になってきたことを理由に,大学図書館の開館時間の変更が相次いで実施された1)。
つまり大学に入学してくる学生数の減少により大学間での競争が熾烈になり各大学がカリキュラムや時間割などの見直し,改革を行うようになり,そのことがひいては図書館の開館時間に大きな影響を与えているというのだ。…
参考箇所の記載例
- 著者は【要約文】と述べている(説明している・分析している等)。 山田は著作の中で,近年の大学改革の影響が大学図書館の開館時間に影響を与えたと述べている1)。
- 著者によると【要約文】(である)。 山田太郎によると近年の大学改革の影響が大学図書館の開館時間に影響を与えている1)。
注意点など
- 授業の課題であるレポート,論文において上に述べるような「剽窃」を行ったと判断される場合,カンニング同様,成績はD評価とする。自分で判断ができない場合は遠慮なく相談すること。
- あまり引用や参考が多いと,他人の文章の借用ばかりで,自分自身によるまとめや意見,考えが希薄になってしまう。本当に必要な箇所はきちんとした方法で利用し,やたらと引用や参考を増やすのはやめよう。
- 使用した文献は,レポート本文末に,文献リストとして文献番号とともに記載しよう。文献リストの書誌情報の書き方は,「文献リストの書誌情報書き方例」を参照のこと。
参考文献
- 戸田山和久.論文の教室:レポートから卒論まで.東京、日本放送出版協会,2002,p.34-35.
- 浜田麻里ほか.大学生と留学生のための論文ワークブック.東京,くろしお出版,1997,p.9-12.